📖小説とは、
「物語性を持った散文形式のフィクション」
です。
登場人物・出来事・会話などを通して、人間の内面・社会・世界を描く文学の一ジャンルです。
- 実際にあったことではなく、想像された出来事(フィクション)がベース。
- 文体は多くの場合、散文(詩ではない普通の文章)。
- 作者の視点や語り口によって、現実をさまざまに写し出します。
🌍 小説の起源はどこ?
小説の起源は一つではなく、地域ごとに「物語の形式」は古くから存在します。
◉ 世界的な視点
- 紀元前から「物語」は存在(口承、神話、叙事詩など)。
- 散文形式で“フィクション”として読まれる作品が登場したのは、
古代ギリシアやローマ時代とされます。
例:
- 『ダフニスとクロエ』(2〜3世紀・古代ギリシアの恋愛物語)
- 『黄金の驢馬』(2世紀・ローマのルキウス・アプレイウス著)
これらは「今風の小説」に近い内容を持つ古代小説(Ancient Novel)と呼ばれます。
◉ 日本における起源
- 日本の古典文学における「小説の先祖」は、なんといっても平安時代の『源氏物語』(紫式部)。
現代の意味での「心理描写・人物造形をもった長編フィクション」として、
『源氏物語』は世界初の本格的な小説と評価されることもあります。
🧾 「小説」という言葉の由来は?
「小説(しょうせつ)」という語は、中国が発祥です。
◉ 中国での「小説」
- 元は儒教的な考えからきており、
- 『漢書・芸文志』には、小説を「道聴塗説(どうちょうとせつ)」=道ばたの噂話、として、
- つまり「価値の低い話」という意味で使われていました。
つまり、“くだらない話”という蔑称から始まった言葉なんです。
◉ 日本での定着
- 江戸時代、「読本(よみほん)」や「浮世草子(うきよぞうし)」など、物語風の文章が多数登場。
- 明治時代になると、西洋文学の翻訳が本格化し、“novel” = 小説として定着。
- 坪内逍遥(つぼうちしょうよう)が1885年に書いた『小説神髄(しょうせつしんずい)』で、
小説とは「人情を描き、世態を写すもの」
と明確に定義し、日本における小説観を確立しました。
📖 小説のジャンル史(日本中心)
◉ 私小説(ししょうせつ)
- 自分自身の体験・感情・人生を素材にした“自伝的小説”
- 作者=語り手と一致することが多く、内面の葛藤を重視。
- 日本独自のジャンルであり、欧米には直接対応するものがない。
📌代表作家・作品
- 島崎藤村『破戒』
- 志賀直哉『城の崎にて』
- 太宰治『人間失格』
◉ 純文学(じゅんぶんがく)
- 芸術性・文学性を重視し、人生や人間の本質に迫る。
- 商業的成功よりも、表現の深さや思想性に価値を置く。
📌特徴
- テーマが重く、実験的な文体も多い
- 文学賞(芥川賞など)の対象になる
📌代表作家
- 谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、村上春樹(初期)
◉ 大衆小説(たいしゅうしょうせつ)
- 物語性・娯楽性を重視し、多くの読者に親しまれる小説
- 推理小説・時代小説・恋愛小説などジャンルが広い
📌代表作家
- 司馬遼太郎(歴史)、松本清張(社会派推理)、池井戸潤(経済サスペンス)
◉ その他のジャンル(現代)
- ライトノベル、BL、SF、ミステリー、ファンタジー、ケータイ小説などが細分化。
- 現代では「純文学」vs「エンタメ(大衆)文学」の二分構造は崩れつつある。
📖 世界文学における小説の発展史(簡略年表)
時代 | 代表作品・動向 |
---|---|
紀元前~古代 | 『ギルガメシュ叙事詩』『黄金のロバ』(古代ローマ) |
中世 | 『ドン・キホーテ』(スペイン・1605年)※近代小説の祖 |
18世紀 | 英国の小説黄金期(リチャードソン『パミラ』、ディケンズ) |
19世紀 | フランス写実主義(バルザック、フローベール) ロシア文学(トルストイ、ドストエフスキー) |
20世紀初頭 | モダニズム(カフカ、ジョイス、ウルフ) |
20世紀後半 | ポストモダン小説(カート・ヴォネガット、ガルシア=マルケス) |
21世紀~ | グローバル文学(村上春樹、チママンダ・アディーチェなど) デジタル小説、ジャンル越境型へ |
📖 日本における「小説家」の職業化の流れ
◉ 江戸時代(17〜19世紀)
- 浮世草子や読本などが人気に
- 十返舎一九(『東海道中膝栗毛』)などは印税収入で生活できた、最初のプロ作家
- ただし、「文筆業」はまだ一部の例外的存在
◉ 明治時代(19世紀末~)
- 文学が「学問・芸術」として認識され始める
- 坪内逍遥、二葉亭四迷らが「近代文学」の確立を目指す
- 雑誌・新聞連載が主流となり、小説家という職業が成り立つ土台ができる
◉ 大正~昭和初期
- 文芸誌が隆盛(『文學界』『新思潮』など)
- 小説家がサラリーマンのように“書いて食べていく”時代へ
- 芥川龍之介、谷崎潤一郎、志賀直哉などが社会的影響力を持つ
◉ 戦後〜現代
- 戦後民主主義とともに文学ブーム。作家がテレビや新聞に登場するように
- 純文学と大衆文学に分かれつつも、大衆小説が商業的に成功
- 芥川賞・直木賞が「作家デビューの登竜門」に
- 現代では「小説家=プロ」だけでなく、「兼業作家」「ネット発」も多数
✍️ まとめ
項目 | 内容・ポイント |
---|---|
小説とは? | 散文で書かれたフィクションの物語文学 |
世界の起源 | 古代ギリシアやローマ(『黄金のロバ』など) |
日本の起源 | 平安時代の『源氏物語』が最古かつ最高峰 |
「小説」の語源 | 中国発、もとは「つまらない話」という意味 |
日本での確立 | 明治時代、坪内逍遥が小説理論を提示 |
小説のジャンル史 | 日本独自の「私小説」や「純文学」が特徴的。現代はジャンルが多様化 |
世界小説史 | ドン・キホーテ→ロシア文学→モダニズム→ポストモダン→グローバル化 |
日本の小説家職業化 | 江戸で印税→明治で職業意識→昭和で確立→現代はマルチスタイルへ |
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